長く息を吐いて、吸って、また吐き出す。

それを何度かして、華取はこちらを見上げた。涙でボロボロになった表情。

唇を噛みしめていて、なにか言いたげな顔だ。

呼吸は落ち着いている。近づいた所為でわかる心音も、安定している。

「ごめん、また、まずいことを言ってしまったか?」

近づきたいと思ってしまった。そして問いかけてしまった。その直後のことだから、邪な心を見透かされようで。

華取は、唇を噛んだ。けれど離れようともしないから、俺はそのまま抱きしめた腕を離さないでいた。

何がそんなにつらいんだ。苦しそうにしているんだ? ……大丈夫か? お前は……俺が傍にいても、大丈夫か?

「……くび、だめなんです、わたし」

華取は小さな声で言って、腕の中で再び俯いた。

「くび?」

「首に、なにか触るの、だめ、なんです……」

「……なにか、いやなことでも?」