「っ、―――っ」

「華取? どうしたっ?」

華取がみせたそれは、過呼吸の症状だ。

胸元を両手で絞めつけるように抑えて、呼吸がまともに出来ていない。

見開いた瞳は涙で潤んで、口からは咳とも嗚咽ともとれない苦しい呼吸ばかりが出てくる。

「華取、――華取っ」

慌てて対処しようとするが、いきなりのことに頭が追いつかなかった。対処知識なんていくらでも詰め込んであるはずなのに―――

「――咲桜!」

どうすればいいか、知識としては知っているはずなのに、華取を抱きしめていた。

大きく背中に手を廻して、息が出来るように胸は空間を作っておく。

「大丈夫だ、咲桜。落ち着いて。大丈夫、呼吸、俺に合わせて」

ポンポンと、リズムを作るように背中を叩く。
 
咲桜、大丈夫、苦しくない。その言葉を繰り返していると、華取の呼吸は落ち着いてきた。