「……せんせい?」
「あ、お隣の人です。夜々さんのお母さんで、お作法とか教えてもらいました」
「そういう人がいるのか」
なるほど。差し障りのない言動は、ちゃんと基礎があるからのようだ。
「じゃあ、呼びやすいように?」
俺の性悪発揮。だんだん楽しくなっていた。
華取のいつもの泡喰った様子を見るだけでも面白いと思ってしまうから、自分も大概だ。
華取は眉間にしわを刻んで悩み始めてしまった。そしてぽつりと言った。
「……………りゅうやくん…………?」
声はもう、消え入りそうだった。
華取は恥ずかしさが限界だったようで、両手で顔を覆った。「マナさんに言いつけますよーっ」と悲鳴をあげるが、別に愛子に睨まれても怒られても、在義さんや龍さんと違って全然怖くない。
愛子は面倒を押し付けてくるから近づきたくない、というだけだ。けれど見える華取の肌は真っ赤だ。
名前くらいでそんなに恥ずかしがらなくても、と思うが、そういうところがまた、愛らしい。
……そういえばいつも、華取はタートルネックだな。