華取の家も俺のアパートも、高台にある。
繋いでいる道は谷のような形になっていて、一度高さ的にくだらなければ行き来出来ない土地の造りだ。
警報レベルだと、その谷部分はいつも水没してしまう。
そんな状態では、車で送って行くのも難しくなる。
と言うことは、華取に帰る術がないということになってしまう。
「すまない、華取……」
「いやー、これはどう見ても先生の所為じゃないですよ。私も来るタイミングまずかったです。天気予報とか見ずに来ちゃったから。とりあえず、在義父さんにメールしといていいですか? ここにいるって言ってないので……」
「すぐに連絡しておいてくれ。必要があったら俺からも話すから」
在義さんが知らないのは、かなりまずい。
もしかしたら、今日華取をここに泊めることになるかもしれない――……あ、頭がゆだりそうなのはなんでだ……。
華取がメールを送ると、すぐに電話の着信音が響いた。
「あ、もしもし父さん? 咲桜」
『うん、どうした?』
華取の傍に立っているからか、電話の向こうの在義さんの声が聞こえてくる。
今、帳場はないから通常業務中だろう。