華取の命令で、俺は包丁から離された。鍋の中のお粥を掻きまわすだけしかさせてもらえなくなった。

隣では華取が流れるような手さばきで調理をしていて、思わず見入ってしまった。

華取が料理をするのを見るのは初めてだ。この前の華取宅では、もう出来上がっていたから。

………。

がんばって……いるんだよなあ……。

「華取は料理、教わった人でもいるのか?」

「はい。桃子母さんは、私が三つの時に亡くなりましたから、お隣の家のお姉さん――夜々さんって呼んでるんですけど、夜々さんに教わりました。言っても、母さんも全然憶えてませんでしたから、桃子母さん自身も夜々さんに料理を教えてもらってました」

そういう人がいるのか。母親が亡くなっていても、そういう方が傍にいてよかったな。

ややさんとやらのことを話す華取は、すごく嬉しそうだ。

「……雨、止まないな」

「止まないですねぇ」