「……悪いが、そこまで華取を巻き込めない。が、この件も――有耶無耶にして愛子が退くと思うか?」

「退きませんね」

神宮先生と私、同じタイミングで肯いた。

「先生は、何と言われてここへ?」

私も声を潜めて問う。

私は生徒だから『先生』と呼ぶことに躊躇いはないのだけど、神宮先生は居心地が悪そうに見えた。

プライベートだからかな? それとも、素の顔を知られたくなかった……という可能性の方が大きいかな。

先生は簡単な言葉で答えた。

「見合いをして結婚しろと言われた」

「……直球過ぎないですか?」

「愛子のやることだ」

「なるほど」

そんな返事に納得して肯いてしまう。

「いるのが私だって知らなかったんですか?」

「知らん。俺も断りにくい相手とかぼかして言っていたが……」