ソファの方を見ると、案の定そのまま寝転がっている。
布団か、せめて上着くらいかけようよ……。
そう思ったけど、見あたるところに布団の類はない。
もう五月も終わりだけど、先生は一応病人だ。
音を立てないように近づいて、着ていた自分のブレザーをかけてみた。
………全然反応がない。ちゃんと寝てくれたのかな? それなら、よし。
任務を一つ達成した心地になって、またそろりとキッチンへ戻った。
先生の傍へ行ったとき、テレビの横に置時計があったのでそれで時間を確認した。
確認してから十分後、おかゆが出来たので、また先生のとこまで行って、ソファの前に膝をついて軽く肩を叩いて呼びかけた。
先生はすぐに飛び起きて――顔色を悪くさせた。まさかの悪化⁉
「先生っ? だ、大丈夫ですか? さっきより顔色悪いですよ?」
心配が募って言うと、先生はソファの上に正座して、差し出すようにブレザーを返して来た。なんでそんな態度を……。
「いや、大丈夫だ。……すまなかった、上着を借りてしまったようで……殺される……」
「なんでですかっ⁉ あの、本当に錯乱してません? 熱の所為で、っていう現象起きてませんかっ?」
先生の言葉の文脈がゼンゼンわからない。熱の所為で神経やられたとかじゃないよね? 心配過ぎるよ、この人。