「ん?」
ふと気づくと、通路に華取がいた。
松生も一緒で、更にもう一人、体育科の弥栄旭葵の許へ駆けていくところだった。
今俺がいるのは本校舎の歴史科の教員室だ。
教員が共同で使うものはここに置いてあるので、それを取りに来たところだ。
室には一人先客がいて、窓が開け放たれていた。
その向こう側、中庭を通る通路で華取たちが楽しそうに話している。
弥栄は俺と同い年で、はっきり言って見た目がいい。
日本人が好む均整の取れた顔立ちというやつだ。
生徒からも人気はあるし、教師間での受けもいい。
やたら楽しそうに話しているからか、俺の意識はそちらへ向かってしまった。
「おー、咲桜、笑満」
爽やかな笑顔で受け入れた弥栄。
俺は一瞬固まった。今……名前で?
「旭葵くん、次なんだっけ?」
「女子はバレー、男子はバスケ」
「えー、うちらもバスケもしたいー」
口をとがらせる松生に、弥栄は苦笑した。