全然慌てていない先生の様子に、また驚く。そんな落ち着いている場合じゃないですよ! けど今、『遙音』って名前で呼んだ……?

「冷てーな、神宮。俺だって誰に告げ口するわけじゃないんだから、話してくれてよかったのに」

夏島先輩は資料室に足を踏み入れ、先生の机に手をついた。

その間、私も笑満も動けなかった。

「お前に言ったら降渡や吹雪に筒抜けになるじゃないか」

「あ? あいつらには言ってねーの?」

「………」

先生が黙った。言わなくても知られる、って言っていた二人って、昨日逢った吹雪さんと降渡さんのことだったの?

「えーと、華取咲桜と松生笑満ちゃん?」

夏島先輩がこちらを見てにっこり笑った。

「は、はい……」

私は怖々反応する。

夏島先輩は先生の知り合い? 降渡さんや吹雪さんの名前も出ていたし……。

夏島先輩は、私たちに向かって挨拶してきた。