「はがへ、ふぇんふぇ」

「お願いだから黙って! 誰に聞かれてるかわからないんだから!」

仮とはいえ、そんな関係はまずいことくらいわかっている。

必死の形相で言うと、笑満は肯いた。私が手を離した直後に吹き出す親友。

「あははっ、咲桜必死過ぎー」

「必死になるよっ。先生の迷惑にだってなるじゃん!」

「俺のことは気にしなくていい。別にすぐに教師辞めても構わないし」

机に肘をついて、手に顎を載せてこちらを見ている先生がとんでもないことを言った。

「先生っ」

私が蒼ざめて咎めると、先生はしかしどこも気にした風がない。

「それより松生。本当に婚約者でもいいのか?」

「え? いいですよ。先生なら咲桜をあげても」