「それじゃ。また明日」

「はっ、はい。また」

玄関で先生の背を見送るのは妙な心地だった。

また先生がここに帰って来そうな気がするからだろうか。

自分の頭に手を置いてみる。一昨日も、あの大きな手は頭に乗った。

私は小さい頃から背が高い方なので、あまり頭を撫でられる経験はない。嬉しい。

……じんわり、あったかさがただよってくる。

「………」

どうしてあんな言葉をくれるんだろう。どうしてあんなに優しいんだろう。

「……やっぱりいい先生だ」

教師は続ける気はないみたいに言っていたけど、私は十分適職だと思う。もったいないなあ。

「………」

ねえ先生。ご飯、ちゃんと食べてくれてますか? どんなものがすきですか?
 明日、訊いてみようかな。だって、明日がもう楽しみなんだ。

……言葉一つで、逢える約束をしてしまったからかな。