「へえ、それで私の迎えを待たずに咲桜を連れてきてあまつさえ車中で泣かせたと。……なにをしたんだ君は」

在義さんはいつだって声を荒げることはない。

しかし絶対零度の眼光を持った異端の刑事には、俺も若干負け気味だった。

ただいま、リビングで正座させられています。在義さんは俺の前に仁王立ち。

「すみません――」

「謝るようなことをしたのか? 親の私に謝るようなことを咲桜にしたのかい? ――流夜くん」

冷えたと言うよりも凍てついた声で名を呼ばれ、さすがに頬が引きつる。

やっべー人を怒らせてしまった……。

在義さんが本気で怒ってるの、初めて見た気がする。

「なにもしてはいません。話の中で華取が泣くことを言ってしまっただけです」

「へえ?」

「……申し訳ありません……」

在義さんに睨まれれば謝るしかない。

しかし内容は話せない。というより、話したくない。絶対に。