顔を覗き込まれて、私は正気を取り戻した。
この至近距離の美形って結構な攻撃だなっ。
「あ、ごめんなさい。私は――えっと、父さんにどうしても逢ってほしい人がいるから、と。見合いとかぬかすから誰が行くかと反論したら、気絶させて連れてこられました。その間に私に着付けしたあたり、兇手は私の師匠です……。父さんはまあ、マナさんにはあまり逆らえないので。性格的に」
と、着せられた着物の袖を広げて見せる。
こんな格好、正月くらいしかしないよ。
お隣のおねえさんは私を着せ替え人形にするの、結構好きだから。
そして私もおねえさん大すきなので、色々着させられるのも楽しんじゃう。
「………」
神宮先生は黙ってしまった。
「あの……私からも訊いても?」
「ん、なんだ?」
「先生はどっちが本当なんですか?」
「本当、とは?」
「学校の神宮先生と今の先生、全然違う人に見えるので……」
私が言葉を探し探し言うと、神宮先生は、ああ、と肯いた。