「ただでさえ、流夜色々大変なのに。それに咲桜ちゃんのことまで抱え込んじゃって。反対に、生まれに負い目のある咲桜ちゃんが、流夜の色々まで受けちゃうことになったら、なんか嫌だよ」

僕ら周囲の人間から見た流夜の性格の根本に、『他人を標本(サンプル)としてしか見ていない』というのがある。

言い出したのは天科(あましな)っていうとある権力持ちなんだけど、僕らもそれを否定出来なかった。

……咲桜ちゃんだけ、特別例外なんだろうか。

降渡はのほほんと答える。

「そうだなー。でも、りゅうが女の子に本気になったってのはいいことだと思う」

「本気……だと思う?」

「結構思ってる。あいつ、俺が咲桜ちゃんと握手してたら『勝手に触るな』とか言って来たんだぜ? 信じらんねー」

「へー、流夜って独占欲強いタイプなんだ。知らなかった」

「あいつ、まともに彼女いたことねーかんな。どうするかは二人次第だろ。第一、今は同じ学校の教師と生徒だし。咲桜ちゃんには彼氏いないって聞いてるけど、咲桜ちゃんの気持ちがどう動くかにもよる。りゅうのこと、恋愛対象になるかなんてわからん」

現実に迫る問題はこれだろう。降渡は口にした。

確かにそうだね。僕は肯いた。