「はい、華取咲桜です」
「雲居降渡。龍さんの弟子で、流夜の馴染み。よろしくー」
私の手を取ってぶんぶん振っている降渡さんが、急にバランスを崩した。
「勝手に触ってんじゃねえよ」
先生だった。どうやら背後から蹴りを入れたらしい。
え……先生ってそんな感じでもあるの? でも喧嘩とかそういう風でもなく、幼馴染とじゃれている風に見える。
微笑ましいなあ。またもや新発見だった。
「りゅう……」
降渡さんに恨めしそうな顔で睨まれてもどこ吹く風の先生は私を見て来た。
「在義さんには言ってきた」
「怒られ……ませんでした?」
「大丈夫だ。降渡が傍にいるとウイルスがうつる。帰ろう」
「俺ってウイルスなのか⁉」
騒ぐ降渡さんを無視して、先生はまた私の手を取った。
え、あの、先生? 困りながら立ち上がったところで、はっと思いだした。