先に帰るのだったら父さんに連絡をしないと――とスマートフォンを取り出した華取の手を、そっと止めた。

「俺が言い出したんだ。こちらから連絡しておく」

出来るだけ穏やかに言うと、華取はこくりと肯いた。

「吹雪、先に帰っている。降渡には言っておくから」

「わかったわかった。気を付けて」

吹雪は未だに愉快そうに顔を歪めている。

こちらはそれにツッコむ余裕もない。

吹雪を残して、来た道を戻る俺の隣に華取が並ぶ。

……なんだ、この妙な感じは。妙に落ち着いてしまうというか……華取が隣にいるのが馴染んでいる気がする。

「いいんですか? 春芽さんは……」

「構わない。本当ならあいつもあがっている時間だ」

……いつもなら、俺がここに来ている時間でもあるが。

「警察官なんですね」

「ああ。キャリアの癖に一年目で上に目ぇつけられて飛ばされた」

「えっ……父さんみたいな人……」

華取の眼差しが大きく揺れたのがわかった。