「えっ」
食いついた。一瞬、華取が目をキラッとさせた。
どうやら、立ち入り禁止の龍さんの店には興味があったようだな。
傍らに立っていた吹雪はいつの間にか腹抱えてしゃがみ込んでいた。ぷははっ、あの流夜が女の子の気を引くために頑張ってるー。やべーやべー、流夜ってこんなだったのかよー。必死に声には出さないようにしているが、内心大爆笑。
華取に必死になっている俺は、いつもは気づくそれにも気づく余裕もない。
龍さんの店を見られるチャンスにだろうか、目を煌めかせた華取だけど、すぐに何かに気づいたように顎を引いた。
「でも……父さんに知られたら心配かけるし……それに、帰りは父さんも一緒になる予定ですから――」
「俺から連絡する。在義さんに心配はかけさせないから」
「先生……」
そこまで心配してくれるなんて――華取の唇が小さく動いた。