俺はやっと頭が廻り出して額を押さえた。
こういうことを平気で言うんだからな……。吹雪のいつもの暴言は、最早俺の気付け剤か。
華取は、いきなりの吹雪の自分褒めに面喰らった様子だ。まじまじと吹雪を見ている。
面差しが愛子によく似ている吹雪が親戚だと気づいているからかもしれないが、何故吹雪ばかり見る。不機嫌な声で割って入った。
「吹雪、そういうことを言うな。どうしたんだ華取、出歩くには時間が遅い」
「あ、父さんのおつかいです。ここへの急の届け物を頼むって電話が来て。先生は?」
お仕事ですか? と首を傾げる華取。
……在義さんは娘にそういうことを頼む人だったのか。
あまり、プライベートで関わる人を仕事の方へ関わらせるのをよしとしない人だと思っていたけど……余程、急ぎの用事だったのかもしれないが。
「似たようなものだ。帰るのか?」
「はい」
「送る」
「え?」
俺にいきなりの言葉に、華取は間の抜けた声をあげた。