「偽でも仮でも、なんでもいいんだけどさ。マナちゃんが仕組んだことなら僕は少なからず責任感じるけど。……流夜がその子との関係をどうするかは、流夜が決めることなんだからね」

ギイ、と少しだけ、押し開きの扉が軋む音がした。

だがそれ以上はない。

どうしたと顔を顔をあげると、扉の向こうに長い黒髪の少女がいた。驚いた顔でこちらを見上げている。

「……華取?」

今すぐ逢いたいなどと思っていたから幻でも見てしまったのだろうか。

……え? いますぐあいたいってなに? どこの国の言葉? 取りあえず頭が回転してくれなくて、俺は吹雪の愉快そうな視線にも気づかなかった。

「この子がさおさん?」

言って、吹雪が一気に扉を開けた。

華取はびっくりしているためか、すぐには反応しなかった。

吹雪がまた問いかける。

「華取咲桜さん?」

「えっ、あ、はい」

華取は泡喰ったように肯く。吹雪は華取を眺めながらにっこりした。

「初めまして。流夜の友達の春芽吹雪です」

「か、華取咲桜ですっ」

丁寧に頭を下げる華取を見て、吹雪は唸った。

「ふーん。僕の方が美人だね」

「………」

だからこいつは……。