龍さんと在義さんは幼い頃からの付き合いと聞く。
言わずとも通じる阿吽の呼吸もあるのだろう。
俺は面を伏せたまま、軽く頭を上下させることで答えた。
「在義の嫁さんが亡くなってるのは知ってるよな? 嫁さんは、在義が保護した、身の上不明の子だった。そのときには記憶喪失だったとかで、なにもわからなかったらしい。名前も年齢も不明だ。外見からして、当時二十歳くらいっつー予測が出ただけだ。その子は妊娠していた。父親が誰かもわからなくて、警察内では扱いに困ったみてーだな。そこに在義が出てきてよ。身元引き受け人になって結婚するって言い出しやがった。その頃あいつは警視庁のホープってヤツだ。出世街道まっしぐらだったのを、そんなことをのたまった所為で警視庁にいられなくなった。県警に移動出来たのは、まあかなり強引な引き抜きみたいなモンだ。今じゃまかり通らねえよ」