降渡が呼ぶと、春芽吹雪がやってきた。
愛子の甥で、キャリアでありながら一年目で所轄に飛ばされたぶっ飛んだヤツだ。
見た目は、よく美人と言われる。叔母の愛子によく似た、女性的な容貌をしているからだろう。
だが、美人と言われるとキレる。そのくせ、自分から潜入や内定でソレを武器にすることは厭わない面倒な性格をしている。
吹雪は俺の隣に腰かけた。
「どうしたの? 今日は」
わざわざ呼び出すなんて、と、吹雪が問うと、降渡は龍さんを見た。
「龍さんから来いって」
「そいつが在義んとこの娘ちゃんと婚約したっつーから、調子に乗らねーうちにシメとこうと思ってな」
龍さんの言い方で、またダメージを受けた。
ガチでシメられてます……。
俺が一人、だんだんカウンターに額をつけているのが通常になってしまいそうになっている隣で、吹雪は素っ頓狂な声をあげた。