「わかった」

「あ、行く?」

「ここんとこ行ってないしな。けどな、降渡」

「おう?」

もう一回睨んでやる。声は平坦になった。

「龍さんとこ行く前にてめえでコーヒー淹れる奴があるか」

「あはは、悪い悪い。いいじゃん、龍さんの上手さが際立つと思えば。ふゆにも来るように連絡すっからさ。行こーよ」

ポケットからスマートフォンを取り出して、手早く電話をかける降渡。

こいつに華取のメシをやるのは不服なので、署から戻ってから食べることにして私服の上着を取った。

電話はすぐに応答があったようで「じゃー龍さんとこで」という声がして降渡は通話を終えた。

「りゅう、ジャンケン」

「あ?」

「ポン!」

反射的にグーを出してしまった。降渡はパー。

「りゅうの負けー。運転お前な」

「………」

いつもの勝手なノリだ。

龍さんのところまでは歩ける距離だが、どうせこの後に仕事があるから、俺が警察署に行く途中でおろしてくれということだ。

運転席に乗り込んで発車させた。

「龍さんて咲桜ちゃんのこと知ってんの?」