「……なんで知ってる」

俺が睨むが、降渡は愉快そうだ。

愛子が仕組んだこと、どこまで承知しているんだか……。

「俺の情報網だもん。相手が在義さんの娘ってトコまでは知ってんだけどさー」

ほぼ総てじゃねえか。

「仮婚約、らしいぞ。詳しいことは愛子に訊け」

「仮婚約ね。もう聞いてるよ」

「………」

愛子。

心のうちで呪いを吐く。あの野郎、口が軽いのはお前かよ。

愛子が降渡の常連客なのは知ってはいるけど。

降渡が、何故か俺の分もコーヒーを持って来てローテーブルについた。

「娘ちゃん――咲桜ちゃんと在義さんを政敵から護るための策ねぇ、わかるわかる。お前愛子も在義さん大すきだかんな」

「お前だってそうだろ」

「そうだけどさ。俺は立場的に龍さんの後継ってことになってるし。ふゆは一応警察入ったけど、あいつ一年で飛ばされたじゃん? 在義さんの後継がふゆっつーのも、微妙なラインだよなー」