「………もしもし、吹雪(ふゆき)か? 不法侵入者がいる」

「いきなり通報かよ!」

アパートに戻ると、部屋の前に長身の影があった。

真っ黒のスーツにシャツもダークカラー。ネクタイは締めずにボタンをいくつか遊ばせている。

野性的な鋭みの見た目は、幼馴染の一人の雲居(くもい)降渡(ふると)だ。

もう一人は電話の相手。

降渡がわめくので、本当にかけていた電話を切る。

吹雪は電話の向こうで吹き出していた。こんな通報をしたところでまともに取り合う吹雪ではない。

「なんだよ不良探偵。うちに来んなよ」

「暇出来たから遊びにきたんじゃん。たまには構えよー」

「やだよ」

「遊ぼーよー」

(きずな)と遊んでろよ」

「今忙しいんだってさ」

「こっちも忙しい」

「りゅうは夜の仕事してるからだろー?」

「誤解招く言い方はやめろボケ」

騒ぐ幼馴染を部屋の中へ蹴り入れた。