「教師が本業ではなくて、事情があって三年くらい先生やってるって言ってた。そのあとは学者一本にするみたいなことも」

「本業は学者さんなんだ。それで、なんでお見合い?」

「あー、それなんだけどねー……。私のさ、在義父さんの――県警トップの娘っていう位置が、利用されるかもしれないんだって。在義父さんに取り入るため、とかそういう政略っぽいことに。だから、もしそういう話を吹っ掛けられたとき、警察内部に顔が知られているけど内部の人間ではない先生だったら、立場的にちょうどいいんだって。だから、先生が私と在義父さんを護るために偽婚約――対面上の婚約者? になってくれたの。代わりに、私は先生に食事の差し入れすることになった。これはマナさんからの頼み」

「………」

一気に説明すると、笑満は正座で姿勢を正したまま瞬き以外の何もしていない。

さすがの笑満でも理解するのに時間がかかるか……。

あ、あと、先生の性格が別人だって言わなくちゃ――

「――咲桜」

笑満が私の両手をガシッと摑んで来た。