教室のスピーカーから、最終下校時間十五分前を告げる音楽が流れ始める。床で段ボールを切っていた風間くんは、その音に慌てて立ち上がった。

「やべ、皆帰るぞ!」

 放課後も手の空いているメンバーで残って作業をしていたが、いつの間にか時間が経ってしまっていたようだ。窓へ目を向ければ、外はすっかり暗くなっている。
 担任が見回りに来る前に帰ろうと、私達は急いで片付けを済ませ教室を後にした。

 遅い時間にも関わらず人通りが多い廊下は、終電直前の駅のホームを彷彿とさせる。
 クラスメイトに続くようにして教室を後にした私は、廊下の端にぼんやりと灯る明かりに気付いて足を止めた。

(あそこ、まだ電気がついてる……)

 廊下を行き交う生徒の賑わいを避けるようにして位置する一室。
 私の記憶が正しければ、その部屋は確か図書室だったはずだ。

(そう言えば図書室って、ここに来てから一度も使ったことがなかったっけ)

 ドアの外からでも、ちょっと覗いてみようかーー
 そんな好奇心は、階下から聞こえた風間くんの声によってかき消された。