「本番で使うミュージカル用の衣装も、あともう少しだけ待ってて。今織也とミシンの速度マックスにして作ってるから」
「合唱部の皆、感動してたよ。手伝ってくれて本当にありがとう」
「いいのいいの。私も織也も、三年にして真面目に部活やってるー! って感じして、楽しいし」

 合唱部の朋花ちゃんにとっても、三年一組のメンバーにとっても、高校生活最後となる大切な学校行事だ。二年間高校に通うことができなかったかなたにも、今回の文化祭が何かのきっかけになればと思う。

(かなたの言う通り、確かに宿題は面倒臭いし友達付き合いだって避けられないけど)
(高校生活だって、多分そんなに捨てたもんじゃない)

「皆が力を合わせれば、きっと上手く行くよね」

 呟いた言葉に、きららちゃんが「おー!」と右腕を上げて反応する。

 例えここがゲームの中の世界だったとしても。
 彼らが作られた存在だったとしても。

 私の目の前には、一度きりの高校生活を懸命に生きようとする彼らがいる。

(主人公かどうかなんて関係ない。私は皆に、楽しい青春を送って欲しい)

 準備に精を出すクラスメイトの様子を眺めながら、私は改めて決意の拳を握りしめた。