手と手を合わせ、「いただきます」と言って箸を握る。
「なんだ、これは?」
そう言って不思議そうに見つめているのは、エンドウ豆の翡翠煮である。
「エンドウ豆をもっとも美しく、おいしくいただける料理です」
「初めて見たな」
鷹司さんは器用にお箸でエンドウ豆を摘まみ、パクリと食べる。
「こ、これは、うまい! エンドウ豆を噛んだら薄い膜が弾け、たっぷりだしを含んだエンドウ豆が口の中に広がる!」
そのまま食べてもおいしいし、炊きたてのご飯に混ぜてもおいしい。今しか食べられない、ごちそうである。
他の料理も、いちいち感動したようなコメントを残しつつ食べてくれた。これだけ、反応してくれたら、作りがいもあるというもの。
「これだけ素材の味を尊重し、丁寧かつおいしく仕上げた料理は、久々に食べた気がする」
「そのように言っていただけると、とても、嬉しく思います。この土地で採れた、食材ばかりです」
「そう、か……」
鷹司さんは瞬時に察してくれた。これらの料理は、リゾート化してしまったら、食べられなくなるものばかりである。
ここで、本題へと移った。
「鷹司さんは、どうしてこの地を、リゾート地にしようと思ったのですか?」
「人がいないからだよ。この町は、人口がどんどん減っていっている」
一枚の書類を出す。それは、人口の推移が書かれたものだった。明らかに、右肩下がりとなっている。
「十年前、この町には二千三百人、八百五十世帯が住んでいた。十年経ち、現在の人口は千人以下となっている。住人の平均年齢は五十代後半。十年後、この土地は、どうなっているのか、想像は難しくないだろう?」
ぐうの音も出ないほどのド正論だ。確かに、若い人や子どもをあまり見かけなくなったなと思っていたが、想像以上に過疎化が進んでいたようだ。
「学校はあるものの、クラスに生徒はひとりかふたり。スーパーや書店、家電量販店などの店は車で一時間半、唯一の店である駄菓子屋も不定休。雇用もなく、娯楽もなく、住民は古い考えの者ばかり。誰が、この町に暮らしたいと思うだろうか?」
どうにかして、この町を変えたい。そのきっかけが、リゾート化計画なのだという。
「なんだ、これは?」
そう言って不思議そうに見つめているのは、エンドウ豆の翡翠煮である。
「エンドウ豆をもっとも美しく、おいしくいただける料理です」
「初めて見たな」
鷹司さんは器用にお箸でエンドウ豆を摘まみ、パクリと食べる。
「こ、これは、うまい! エンドウ豆を噛んだら薄い膜が弾け、たっぷりだしを含んだエンドウ豆が口の中に広がる!」
そのまま食べてもおいしいし、炊きたてのご飯に混ぜてもおいしい。今しか食べられない、ごちそうである。
他の料理も、いちいち感動したようなコメントを残しつつ食べてくれた。これだけ、反応してくれたら、作りがいもあるというもの。
「これだけ素材の味を尊重し、丁寧かつおいしく仕上げた料理は、久々に食べた気がする」
「そのように言っていただけると、とても、嬉しく思います。この土地で採れた、食材ばかりです」
「そう、か……」
鷹司さんは瞬時に察してくれた。これらの料理は、リゾート化してしまったら、食べられなくなるものばかりである。
ここで、本題へと移った。
「鷹司さんは、どうしてこの地を、リゾート地にしようと思ったのですか?」
「人がいないからだよ。この町は、人口がどんどん減っていっている」
一枚の書類を出す。それは、人口の推移が書かれたものだった。明らかに、右肩下がりとなっている。
「十年前、この町には二千三百人、八百五十世帯が住んでいた。十年経ち、現在の人口は千人以下となっている。住人の平均年齢は五十代後半。十年後、この土地は、どうなっているのか、想像は難しくないだろう?」
ぐうの音も出ないほどのド正論だ。確かに、若い人や子どもをあまり見かけなくなったなと思っていたが、想像以上に過疎化が進んでいたようだ。
「学校はあるものの、クラスに生徒はひとりかふたり。スーパーや書店、家電量販店などの店は車で一時間半、唯一の店である駄菓子屋も不定休。雇用もなく、娯楽もなく、住民は古い考えの者ばかり。誰が、この町に暮らしたいと思うだろうか?」
どうにかして、この町を変えたい。そのきっかけが、リゾート化計画なのだという。