塩に浸けていたエンドウ豆を、別の鍋で煮る。火が通ったら、ぬるま湯に浸けるのだ。

 これは、エンドウ豆に皺が寄らないようにするため。その後、冷水に浸けて、色止めする。これをすると、鮮やかな色のまま提供できるのだ。

 透明のグラスにエンドウ豆を入れ、だし汁を注いだら、“サヤエンドウの翡翠煮”の完成だ。

 味噌汁は、畑で取れたカブを使ってみた。きっと、おいしいだろう。

 続いて、冷蔵庫の中から鶏胸肉を取り出す。塩コショウで下味を付けて、小麦粉を全体に振っておく。

 油を温めている間に、タレを作る。耐熱皿に醤油と酢、砂糖、唐辛子を入れて混ぜ、レンジで一分間温める。

 油が温まったようだ。卵に潜らせた鶏胸肉を油に入れる。ジュワジュワと、勢いよく揚がっていく。
 油の状態を気にしつつ、必要なタルタルソースも作っておく。朝、良夜さんが作ったゆで卵の残りを、使わせてもらった。

 ゆで卵とタマネギ、キュウリをみじん切りにし、マヨネーズと酢、塩コショウ、砂糖、パセリを入れたものを混ぜ合わせたら完成だ。

 油から上げた鶏胸肉を、醤油ベースのタレに絡ませる。それを、一口大に切ってお皿に盛り付けた。仕上げに、タルタルソースをたっぷりかけたら、“チキン南蛮”の完成だ。

 チキン南蛮は祖母が宮崎旅行に行ったとき、あまりのおいしさに感動し、自分で研究したのちに完成した一品である。私の大好物でもあった。

 タケノコご飯も炊き上がっていた。ちょうど、いい感じに蒸れた頃だろう。
 完成した料理を、鷹司さんに運ぶ。ここで、良夜さんとつごもりさんがやってきた。

「手伝います」

「俺も」

 カフェのお座敷に運んだら、テーブルは書類まみれになっていた。

「ああ、すまない。もう、そんな時間だったか」

 眼鏡をかけた鷹司さんは、慌てた様子でテーブルを片付ける。

 カフェのあまり大きくないテーブルの上に、ぎっしりと料理を並べた。

「この短時間で、これだけの料理を作ったのは見事だ」

「元パティシエールですので、手際よく料理をするのは得意なんです」

「そうか。パティシエールだったのだな」

 まさか、地主とこうやって、顔を突き合わせて食事をする日がくるとは、思いもしなかった。遠い存在だと思っていたのに、今、目の前にいる。

 とにかく、今はこの地について知ってもらわなければならないだろう。