なんだか、自慢のようになってしまう。

 案の定、ジロリと睨まれてしまった。

「幸代は本当に、あなたのことを可愛がっていましたね」

「ええ……」

 母親がいなかったので、気の毒に思っていたのもあるのだろう。けれど、自分で言うのもなんだが祖母自身、私が大好きだったのだろう。

「可愛い、孫娘だったので」

「それ、自分で言います?」

「言っちゃいます」

 そう返すと、良夜さんは笑った。バカバカしく思ったのかもしれない。

 しかし、初めて見せる笑顔である。
 最近柔らかい表情を見せてくれるなと思っていたけれど、まさか笑いかけてくれるなんて。

 なかなか可愛らしい笑顔であった。

 感動しているうちに、真顔に戻ってしまった。

「今、変なことを考えていませんでした?」

「気のせいかと」

 そういうことにしておく。

 十一時となり、狛犬カフェは開店となった。最近は私も、着物で接客している。
 着物の着付けはできないので、通販で上下別の二部式着物を買った。

 二部式の着物とは、着付けを知らなくても、驚くほど簡単に着られる着物なのだ。

 まずは海苔巻きみたいにスカート部分を体に巻き付け、そのあと上着を羽織る。最後に、ワンタッチ帯という、巻くだけの帯を着けたら着付けは完成。

 帯を巻かなくても、前掛けを掛けるだけでも問題ない。パッと見、普通の着物に見える優れものだ。

 ポリエステル製なので、洗濯機でジャブジャブ洗えるのもポイントが高い。ありがとうございますと、手と手を合わせて拝んでしまったくらいだ。

 つごもりさんと良夜さんも着物なので、三人和装で揃えると“和カフェ”の雰囲気が深まる。常連となったお客様にも、「似合うよ」と好評だ。

 着物を着て前掛けをかけて、気合い十分にお店にやってきたが、外からザーザーと雨音が聞こえる。大雨が降っているのだろう。

「あー、これは……」

「お客さん、こない」

 つごもりさんがぽつりと言葉を返してくれる。さっきまで雨が止んでいたのに、
 ピカッと外が光ったあと、どーん!と大きな雷が鳴る。

「ひゃっ、大きな雷でしたね」

「雷神が、やってきた」

「雷の神様、ですか?」

 つごもりさんは、コクリと頷いた。

「雷神は、日本各地にいる。隣町にも、奉られている」

「そうなのですね」

 雷は“神鳴り”とも書くらしい。

「雷は、雷から守ってくれたり、雷を鳴らしたりする」