記憶の中の自分は、肌はピチピチしていたし、スーツは借り物のように馴染んでいなかったけれど、今の自分とほとんど変わらない。
痩せっぽちで地味な経理の女子。

少なくとも彼女たちのような華やかさは全くなかったなぁと、思う。

それでも、儀礼的とはいえ飲み会に誘われることもあった。
社会人としてこういう付き合いもできなければいけないという妙な責任感に後押しされて、一度だけ出席したけれど、その時の居心地の悪さったらなかった。

楽しくもないのに作る笑顔は自分でも呆れるほど引き攣っていたし、流行の歌も知らずテレビドラマもわからず、話題には何ひとつ、ついていけなかった。しまいには緊張しすぎてグラスは倒すし、ようやく口から発した言葉は見当違い。

このまま夜空に溶けてこの世から消えてしまいたいと思いながら帰ったその日の経験がトラウマになり、それ以来飲み会には行っていない。

誘われることすらなくなってから久しいが、会社主催の飲み会も強要してはいけないという世の中の風潮のおかげで、なにも困ることはなかった。

そんな感じなので、羽菜子には恋人がいるはずもなく、心配する田舎の母が時々親戚からお見合いの話を持ってくる。

三十五歳になったら考えるからと断っているけれど、あと数年で約束の時を迎えてしまう。そう考えると気が重かった。
歳を重ねただけで、この厄介な性格が変わったわけじゃない。