「彼女を侮辱して恐怖に陥れる保坂のしたことはどうなんですか、暴力と同じですよね!? 庶務課のあいつらだって同じだ。SNSでありもしないハナコの噂を流しまくって、悪意ある暴力ですよね? 訴えてもいいですか? 男を送り込んだんですよ? 主犯じゃないですか!」

いまだ怒りが収まらないというふうに、笹木はまくしたてる。

「わかった、わかった。とりあえず落ち着け」

総務部長と専務取締役がやれやれとため息をつく。

「田中さん、笹木はこう言っているが、君たちが付き合っているのは本当なんですか? 直接関係はないが一応、彼が暴力をふるった理由として確認させてください」

総務部長がそう言って、羽菜子を振り返った。

「――はい。お付き合いさせていただいています」

実はそんなつもりはないし、彼がどうしてあんなことを言ったのかわからないが、ここはそう言わないと笹木の立場が苦しくなるだろう。
そう思って、羽菜子はうなずいた。

満足げに羽菜子を見ていた笹木は聞かれてもいないのに、

「これからプロポーズしようと思ってたんですけど、なるべく早く結婚することにします。危ないんで」
と言い出して止められた。

「笹木、お前はもういい」


羽菜子はただただ真っ赤になって、うつむく。
お願いだからもうそれ以上なにも言わないでと、心の中で笹木に訴え、祈るばかりだった。