「あ、ありがとうございます。――また来ます。来ます、必ず」

今の自分の顔に浮かんでいるのは、彼女よりももっと不器用な笑みに違いないと思う。
泣いているか笑っているかわからないような顔をしているだろう。

それでも羽菜子は精一杯の笑顔を作り、ガッツポーズを返した。

うんと頷いて、女性は店内に戻っていく。



タクシーの中で羽菜子は心を震わせながら思った。

――これは私だけの問題じゃない。

彼女のためにも、きちんと否定しなければいけない。

店にひとりで来ている女性にも、男性にも、そして『執事のシャルール』のためにも。

このままにはしておけないんだ。