――笹木くんも、そう。

『わかった』

呆れた顔もせずに、彼は羽菜子の望みを叶えてくれた。

キスもしたことがない羽菜子にキスを教えてくれた。

抱き合うと、こんなにも優しい温もりに心が満たされるんだということとか、幸せ過ぎる時も涙は流れるっていうこととか。たった一晩の間に、沢山、たくさん教えてくれた。

同じベッドで一緒に朝を迎えて、目の前に彼の寝顔があった時の、あのなんとも言えない切ないような感じ。
その一つひとつを、羽菜子は一生忘れないと思った。

友達だなんて思っていない。
本当は、彼のことが好き。あの入社式の時からずっと。

でもそれは一生の秘密。
その秘密と一緒にイブの夜を、心の中の一番大切な箱に大切にしまおう……。



「いたいた、田中さん。本当だったんだ」

――え?