結弦の案内でフロント脇の階段から二階へと上がると、廊下のつきあたりで男女にわかれて、それぞれの部屋へ入る。わたしと美輝は着替えとバスタオルを準備して結弦達に声をかけると、すぐに温泉へと向かった。
「楽しみだねえ、温泉」
美輝はスリッパをぱたぱたと鳴らして小走りをしている。弾んだ気持ちを抑えられないといった様子だ。子どもみたいでかわいらしい。
鼻歌まじりに駆け出す美輝につられて、わたしもつい小走りになった。内心想像していたよりも大きくてきれいな旅館に心が躍る。お風呂あがりに袖をとおす浴衣も、今から楽しみだ。
脱衣所で服を脱いで浴場へ入ると、わたし達以外誰もおらず、近くの洗い場に美輝と並んで座った。
温度が丁度いいことを確認してからシャワーを浴びる。夏とはいえ、お湯の温もりが疲れた体に心地いい。
頭と体を洗い、肩下まで伸びた髪を纏めた。美輝も腰近くまである髪をアップにして整えると、ふたりで露天風呂に移動してお湯に浸かった。
外は随分薄暗くなっていて、ところどころに設置された暖色のライトがほどよく和の雰囲気を演出している。
「あぁ、気持ちいいねぇ」
「うん、癒されるね」
美輝は温泉が似合う。
綺麗な顔立ちが熱を帯びてさらに艶っぽい表情になっていて、そのスタイルのよさからか、似合うというかとても映える。画になるというのだろうか。
それにわたしと違って胸も……。
「どうかした?」
「な、なんでもない」
思わず見とれてしまった。ほとんど毎日顔を合わせているのに、美輝とふたりきりなのが久しぶりな気がしたのも理由のひとつだろう。
照れて緩んだ顔を隠そうと慌てて美輝に背を向けると、美輝が背中越しに声をかけてきた。