レトロな駅舎に降りたつと、田舎の空気はまたその色を変えた。
 新緑の香りに紛れるこれは、潮の香りだ。


「おぉー、いいとこだなあ」


 バスでも眠り先刻の電車内でも熟睡していた怜は、とても調子がよさそうだ。美輝は寝てる間に乱れてしまったポニーテールをくくり直している。


「さあ、もうすぐだから、頑張って歩こう」


 結弦がリュックサックを背負い直して歩き始めた。
 怜は駅舎横の自販機で買ったジュースを一気に飲み干して、ぷはっと一息吐いてから、よしっと気合いを入れていた。

 駅前からは緩やかに上る坂道に沿って商店や旅館が軒を連ねている。わたし達は最後のゴールを目指して、ほのかに海の気配がする坂道を上り始めた。