「いらっしゃいませ」
店内に入ると、わたし達と同年代くらいのアルバイトらしき女の子が出迎えてくれた。
艶やかな黒髪に鼻筋がすらっととおっていて、大人っぽい印象のとてもきれいな店員さんだ。
「四名様ですか? お好きな席へどうぞ」
中央にある四人がけのテーブル席へ座り店内を見渡していると、店員さんがすぐにお水を持ってきてくれた。
店員さんにも店の内装にも、やっぱり見覚えがある。
でも変だな。昔の記憶だとしたら、店員さんに見覚えなんてあるはずないんだけれど。
どう見てもわたしと同年代くらいの女の子だし、子どもの頃の記憶に彼女がいるはずがない。
高校生になってからの記憶を疑ってみたが、ここ数年の家族旅行くらいはさすがにちゃんと覚えている。だとすると……、
「ねえ、あの店員さんどこかで見たことない? ほら、芸能人とか」
みんなの顔を見渡すように問いかける。
「誰だろ? わたしはわかんないや」
「俺も知らねえ。てかなんで芸能人が地方でバイトしてんだよ。結弦は知ってるか?」
「いや、俺もわからないな。テレビに出てる人?」
やっぱり誰も知らないみたい。雑誌かなにかで見たモデルさんにでも似ていたのだろうか。
「ううん、どこかで見たことある気がしたから、誰だったかなあと思って。気のせいだね、きっと」
きれいな人の顔は、みんなどこかしらの共通点を持っているものだ。
昼食時を大幅に過ぎてお腹も空いていたので、それ以上は気に留めず、隣で美輝が開いたメニューを横から覗き込んだ。