わたしの言葉に、美輝は眉根をひそめる。 「えっと、もしかして夢でも見たの?」 「違う! 夢なんかじゃないの。もうすぐこのバス、湖に落ちるのよ!」 思わず声が大きくなってしまい、通路を挟んだ横隣の人達が怪訝な顔をしてこちらを覗き込んでくる。 「あの、琴音……。なんか怖い夢見たんだろうけどさ。大丈夫だからね」 美輝が、震える手をそっと優しく握ってくれる。わたしはその手を強く握り返した。