美輝は本当にわたしに優しくて甘い。高校で出会ったのに、まるで何十年も一緒にいるみたいにわたしを大切に想ってくれているのが、こんなときにまで伝わってくる。


「琴音、窓側に座りなよ」


 わたしにはそのまま窓側に移るように勧めてくれた。


「うん、ありがとう。ごめんね、美輝」


 そのまま窓側の座席へ横移動したが、わたしはまた違和感を覚える。

 なにかの音を聞き逃していないだろうか?

 あの日も事故に遭う直前、結弦に勧められてわたしは窓側へ移動した。

 そのときは乾いた金属音がしていた気がする。


「よいしょっと」


 美輝が隣にぽすんと座って、わたしに顔を向ける。後ろでは結弦と怜がなにか話しているが、内容までは聞き取れなかった。


「で、どうしたの琴音。なんかあった?」


 ひとつ息を吸い込んで、事故のことを話そうと決めた。美輝ならきっと、信じてくれる。


「美輝……変なこと言うかもしれないけど、怒らないで聞いてくれる?」

「もちろんだよ。どうかした?」

「このバス、もうすぐ事故に遭う」