「ゆ、結弦……目が覚めたの?」
「寝てたのは琴音だろ? まるで俺が眠ってたみたいに言うなよ」
ふはっと笑いながら話す結弦。
「琴音、ほんとに大丈夫? なんか顔色悪いよ?」
美輝が心配そうに通路側から身を乗り出してきた。
「慣れないバスで酔ったんじゃねえのか? 美輝、水出してやれよ」
「はーい」
怜に促され、美輝がごそごそとカバンを漁る。
酔った? ううん、そんなんじゃない。これが現実だとしたら……そうだ、日付。今日は二〇二九年八月二十三日のはずだ。
慌ててポケットの中のスマホを取り出す。
それを見たわたしは、驚いて一瞬息を詰まらせた。