「おはよう、琴音! 目は覚めた?」


 後ろの座席に座っている美輝が通路側からひょいと顔を出し、わたしに声をかけた。


「ようやく起きたのか琴音。お前、口開けて眠ってたぞ」


 美輝の隣に座る怜が、座席の上から顔を出し、わざわざわたしの痴態を告げる。


 ――え?


 美輝? 怜?
 なんでここにいるの?

 ていうか、ここは……どこ?
 わたし、また夢見てるの?

 
 両手で自分の頬に触れてみるが、確かに現実の感触がある。


 ということは、これまでのことが全部、夢?


 いや、そんなはずはない。確かにわたしは慰霊碑のある場所からダム湖へと身を投げた。


 それならここは死後の世界ってこと? いや、でもこの光景にこのやり取り、どことなく覚えがある。
 死後の世界は、こんなに現実と似ているのだろうか?


 ――違う、なにかがおかしい。


「どうしたの琴音? もしかして寝ぼけてんの?」


 美輝が、きょとんとした声をあげる。


「ふふっ、昨日はあんまり眠れなかったのか?」


 隣にいる結弦が、こちらへ顔を向けて言った。
 

 結弦……? なんで、結弦までここに?