なんだか、怖い……。
そんなことを想像していた矢先だった。
パアアアアン!
バスの巨大なクラクションがけたたましく数度鳴り響いて、体が大きく左右に振られた。
え? なに……?
キキイイイイイッ! ガシャアアンッ!
大きな音がして体中に衝撃が伝わると、内臓がふわっと宙に浮く感覚が襲う。
窓からは空が額縁で切り取られたように、その青さを覗かせていた。
うそ……わたし……落ちてる?
瞬時に結弦の腕がわたしを包みこむ。
あっという間に天地は逆転し、わたしたちを乗せたバスはそのままダム湖へと転落した。
水面に激突した衝撃でバス前方の車体は歪み、辺りで窓ガラスが割れる音が響くと、津波のような水が勢いよく狭い車内に流れ込んでくる。
『うわあああん!』
後ろから聞こえてくる、恐怖に染まった子どもの叫び声。
『美輝っ!』と叫ぶ怜。
そこら中から響き渡るおぞましい悲鳴を聞きながら濁流がわたし達を飲み込むと、頭からはサーっと血の気が引いて意識が薄れ始めた。
遠くから、必死でなにかを叫ぶ結弦と怜の声が聞こえる。
かすかにいい香りがして、体がふわっと浮かびあがった。
苦しかったのはほんの一瞬。
死ぬんだな……と思った。
ぼやける視界の中、微かに七色の光が見えた。
そこで、わたしの意識は途切れた。