――空に光が溶けていく。

 世界が輝きに包まれて、まるで未来を照らしているみたい。

 突然降り出した雨に打たれて、もしもそこで立ち止まってしまったとしても、みんなで過ごしたこの瞬間を思い出すだけで、わたしはきっと、また歩き出すことができるだろう。

 みんなと出会って共に過ごしてきた歳月に、心から感謝を伝えたい。
 この旅で成長できたであろう自分自身にも、頑張ったねと言ってあげたい。
 そしていつの日か生まれ変わったそのときも、またみんなと出会いたい。
 そうしたら永遠に、わたしは笑って強く生きていられるから……。



 後半のスターマインが終わり、最後に一番大きな花火が夜空を覆いつくして夏祭りは幕を閉じた。


 わたし達も拍手で空に溶けていく輝きに別れを告げる。


「すごかったね! わたし感動しちゃったよ。みんなで観れてよかったよね!」


 美輝の興奮冷めやらぬ声。怜も満足といった表情をしていた。わたしはもう来年の夏祭りが楽しみになっていた。


「来年もみんなで来ようよ! 今度は葵ちゃんも誘って」


 気の早い話だ。すると、結弦が口を開いた。


「きっと次の花火が上がる頃には、琴音は葵ともっと仲良くなっているんだろうね」

「もちろん! そうしたら来年は五人だね」


 嬉しい気持ちが今にも爆発しそうなわたしに、美輝が微笑みかけて言った。


「いつかまたこうして、みんなで集まって花火とか観れたら、ほんとに嬉しいね」


 怜も「そうだな」と相槌を打つ。


 結弦は完全に目を覚ました猫を、まるで自分の子どものように腕の中であやしていた。


「花火も終わったしお腹も膨れたし、そろそろ旅館に戻ろうか」


 結弦がそう言うのと同時に、腕の中にいた猫が結弦の胸を蹴って飛び降りた。

 そのままわたしのほうへ走ってきたかと思うと勢いよくジャンプして、わたしの腕から葵ちゃんのヨーヨーを華麗に奪い地面に着地した。


 慌てて手を伸ばして追いかけてみるが、走り出した猫のスピードに敵うはずもなく、ヨーヨーを咥えた猫はあっという間に見えなくなった。


「ごめんみんな。葵ちゃんのヨーヨー取られちゃった」

「気にしなくていいよ。俺もちゃんと猫を捕まえられてなかったし、それに明日も葵に会えるかどうかはわからなかったんだから」


 美輝も怜も、落ち込むわたしに気にしないでと笑って励ましてくれた。

 悩んでもヨーヨーが返ってくるわけでもない。

 自責する心にそう言い聞かせて、旅館への道を引き返した。