あぁ、もう知るか! 元はと言えば、なにを言っても怒るか否定しかしない課長が悪いんじゃない!

 そもそもなんで部下のミスに対して上司は謝りに行かないの?

 わたしがひとりで行ってどうなるの?

 なんにも解決しないじゃない!

 そうか、きっとあいつはこうしてわたしを虐めてるだけなんだ!



 こんな会社、もういやだ! こんな人生、もういやだ!


 雨に紛れた涙がぽろぽろとこぼれ落ちる。

 水溜まりに映り込んだわたしの姿を激しい雨が歪めて、まるで今の醜い感情が映し出されているみたいだ。

 人も町もなにもかもが、雨と涙で水彩画のように滲んでいる。

 目の前のキャンバスには無数の雫だけが描かれていて、息が詰まる人混みも、今だけは見えない。


 大雨に打たれ、泣きながらふらふらと歩き続ける。気がつくと結弦が入院している病院の近くまで来ていた。