部屋に入るとわたしの着付けを千佳さんが、美輝の着付けを結弦のお祖母さんが手伝ってくれた。
 手伝ってくれたと言うより、わたし達はただ腕を上げて突っ立っていただけだけれど。


 仕上りはもちろん完璧だった。自分達で着付けるのとは、きっと比べ物にならない。


「娘がいたら、こうして着付けてあげたかったのよ。あなたで夢を叶えちゃったわ」


 千佳さんが、着付け終わったあとのわたしを見て言った。


「わたしも千佳さんみたいな、きれいで優しいお母さんがいたら嬉しいです」


 いつもなら戸惑うところだと思うけれど、また素直な気持ちを口に出すことができた。


「そう言ってもらえて嬉しいわ。甥っ子の彼女だし、ほとんど娘と変わらないものね。でも、あなたのお母様なら、きっとすてきな人でしょう」


 千佳さんにそう言われて、わたしはお母さんのことを思い出していた。