遠い目をしてわたし達のやりとりを見ていた結弦が口を開いた。
「よかったら、葵も一緒に夏祭り行かないか?」
それはうれしい提案だ。
なぜか葵ちゃんとはこれからもずっと一緒にいる予感がしていたから。
だけど葵ちゃんは少し視線を落とすと、さっきとは打って変わって小さな声で、そして少し躊躇うように口を開いた。
「ありがとう……でも遠慮しとくわ。これ以上あたしがあなた達と関わっちゃうのは、あまりよくない気がするから」
さっき、わたしにはずっと友達って言ってくれたのに、なぜそんなこと言うんだろう。
もしかしてカップルばかりの中に自分が割り込むのはよくないと思っているのだろうか。
だとしたら淋しい。
「葵ちゃん、遠慮しなくていいよ! 一緒にお祭り行こう!」
思わず声を張り上げた。
美輝と怜も驚いた目でわたしを見ている。
葵ちゃんも同じように驚いた顔でわたしを見て、すぐに笑い声をあげた。
「あはは、ありがとう琴音ちゃん。でもそんなんじゃないよ。ほら、あたしかわいいじゃん。もう他に誘ってくれてる男の子がいるのよ」
いやだ、葵ちゃんともっと一緒にいたいのに。
せっかく友達になれたのに。
次はいつ会えるかわからないのに。
「だから、またこっちに来たときに誘ってよ。そのときは一緒に花火観ようね」
他の男の子とデートって言ってるのに、これ以上無理に誘うわけにもいかないし、じゃあその男の子も一緒に、なんて誘ったら余計に迷惑だ。
「わかった……約束だよ」
肩を落とすわたしに葵ちゃんが近づいてきて、胸の前に小指を差し出す。
「うん、約束」
わたしも小指を出して、葵ちゃんと指切りを交わした。
きっとまた会いに来ると、自分自身に誓いを立てて。