「これって……?」
「トンボ玉って言うのよ。綺麗でしょ、あたしが作った御守りよ」
「そんな大切なもの、もらえないよ」
「いいの、あなたが持っていて。きっとこれが琴音ちゃんを導いてくれる。そして、そのときが来たら、あたしはあなたに会いに行くわ」
そう言うと、手に持ったトンボ玉をぐいっと押し付けて、むりやりわたしに掴ませた。
「ちょっと待って、葵ちゃん」
やっぱり返そうと声をかけるけれど、今度は結弦にとめられる。
「琴音。せっかくだから受け取っておきなよ」
でも初対面なのにどうして? それにそのときっていつ?
だけど、ふたりの表情からなんだか返せる雰囲気でもなかったので、わたしはそれを不本意ながらも受け取ることにした。
「あ、ありがとう……葵ちゃん」
「ふふっ、いいのよ。みんなにはこれあげる、餞別ね」
満足そうな笑みを見せる葵ちゃんは、駄菓子を四つと、外の冷蔵庫からラムネを四本持ってくると、ひとりずつ手渡していった。
「あの、わたしこれももらっちゃっていいの?」
「もちろんよ。なにかあったらあたしのことを思い出してね。あたし達、これからもずっと友達よ」
そう言いながら、葵ちゃんはわたしの頭を優しく撫でる。
――ずっと友達。
その言葉が、なぜかとてもうれしかった。
美輝と怜だってこれからもずっと友達だ。なのに、どうしてだろう。葵ちゃんの言葉はわたしになにか違う安心をくれる。