「ずっと連絡できなくてごめんな」

「ううん、わけありなんでしょ。次のお盆にあたしが覚えていられたら、今度はこっちから会いに行ってあげるわよ」


 結弦はかき氷を手に持ったまま、みるみる表情を強張らせた。


「葵……もしかして、気づいてたのか?」


 どうしたんだろう? 葵ちゃんに隠しごとでもしてたんだろうか?


「なんとなくね。確証はないけど、なんでこんなことしてるのか大体想像できたわ。まったくあなたも無茶したものね」


 結弦は手に持ったかき氷に、口をつけようともしない。


「話したいことはまだあるんだけど、あまり時間もなくてさ。せめてこれあげるよ。餞別」


 葵ちゃんはふふっと笑って、結弦が差し出したかき氷を受け取る。


「逆でしょ、普通。……わかってるわよ。あたしにはあたしのやることがあるみたいだしね」


 そう言うと葵ちゃんはわたしの前へ来て、結弦から受け取ったかき氷をわたしに差し出した。


「琴音ちゃん、いちごと替えて! あたし抹茶苦手なの」


 これはわたしに気を遣ってくれてるんだな。結弦からもらったものをそのまま食べないようにって。


「うん。ごめんね、たくさん食べちゃったけど」

「全然いいよ。こんなに食べたら、あたしすぐ頭きーんってなっちゃうから」


 そう言ってわたしと葵ちゃんは、かき氷を交換した。


 葵ちゃんと結弦。さっきのやりとりはなんだったんだろう? わたしにはわからないなにかを話してるみたいだった。

 ふたりの頭の中では会話が成り立っていたみたいだけれど、小学校の頃の出来事とかが関係してるんだろうか……。


 考えたってわからない。わからないなら気にしないほうがいい。


 わたしはこの気持ちに蓋をすることにした。

 考えてもあまりいい気分にはならないし、気持ちに蓋をするのは得意だったはずだから。