「「いただきまーす」」
席に戻って四人で手を合わせてから、この辺で獲れたという新鮮な魚が詰まった海鮮丼を食べ始める。
「なあ結弦、あのペースなら昼からはそんなにかかんねえだろ?」
怜がお箸を動かしながら訊ねる。
「そうだな。琴音と美輝も手伝ってくれるなら、あと一時間もかからないと思うけど」
「じゃあさ、終わったらこの辺散策しねえか? 俺、駄菓子屋に行ってみたいんだよなあ」
駄菓子屋ってなんの話だろう? と、一瞬耳が反応するが、視線は手元にある海の幸に向いたままだ。
わたしが魚に夢中になっていると、美輝が結弦達の話に乗っかった。
「この辺に駄菓子屋があるの?」
「うん、俺が小学生の頃に遊んでた駄菓子屋が近くにあってさ。まだあるかなあなんて、さっき怜と話してたんだよ」
「本物の駄菓子屋なんて見たことねえから、なんか興味沸いてこねえ? 百円のお菓子買おうとしたら百万円とか言われるんだぜ、きっと」
「今どきそんなわけないでしょ。だけどわたしも興味あるなあ。アイスも食べたいし。琴音は?」
残しておいたうにといくらを一緒に口へ放り込もうとした至福の瞬間、急に話を振られて一瞬なんだっけと戸惑いながらお箸を戻して考える。
ああ、そうだ。駄菓子屋の話だ。
「あ、うん。わたしも駄菓子屋行ったことないから、ちょっと行ってみたいかも」
「琴音、今よく話聞いてたね。ごはんに夢中で絶対聞いてないと思ったから、わざと振ったのに」
美輝がにやりと目を細めて言ったので、なるべく低い声で「いじわる」と返した。
よくあるわたしと美輝のやり取り。それを見ていた結弦が、笑いながら言った。
「よし、じゃあ早いとこ草を刈り終えて、駄菓子屋に行こう」
全員が賛成して海鮮丼を食べ終えると、わたし達はジャージに着替えて裏庭へ戻った。
結弦と怜が電動草刈り機で草を刈り取り、わたしと美輝は刈り終えた草を一ヵ所に集めていく。
夏の日差しを浴びながら作業を続けて一時間が経った頃、ついに草刈りに終わりが見えた。
「やっと終わったあ! あっちい!」
ゴーグルを上げた怜の顔は真っ赤だ。こんなカンカン照りの日に外で作業していたのだから無理もない。
「みんなありがとう。じゃあ片付けて出かけようか。俺はじいさんに終わったって言ってくるよ」
結弦は手際よく片付けを済ませると、お祖父さんのもとへと向かった。
それを見送ったわたし達も部屋へ戻ってシャワーでさっと汗を流して、普段着に着替えた。
――駄菓子屋か、どんなお店だろう?
かわいいおばあちゃんが座布団に座って店番をしている。
そんなイメージと共に、わたしは期待に胸を膨らませていた。