「で、結弦とはどんなこと話したの?」


 美輝の問いでへにゃりと緩む口角をなんとか持ち上げた。


「田舎の星空とか、小学校の頃の話とか、あと、わたしの未来の話かな」

「……未来の話って?」

「ほら、昼間の事故の件あったじゃない? 予言したわたしがエスパーだって話になって。そしたら結弦がね、琴音の未来を見て教えてって言うから、わたしピアノの先生になってるって言ったの」

「それって、将来の夢だよね」

「そうそう、つい自分の夢を話しちゃった。でね、わたし調子に乗っちゃって、結弦と結婚して家庭を築いてるって続けて言っちゃったの」


 美輝が「おぉっ」と感心したような声をあげる。


「そしたら結弦、急に様子がおかしくなっちゃって……。あぁ、やっぱりわたし重いこと言っちゃったかなあ、言っちゃったよねえ! ねえ、美輝!」


 美輝の浴衣に手を伸ばして、がくがくとその体を揺さぶる。
 思い出すと恥ずかしい。海辺の解放感というか、いい雰囲気が背中を押したとはいえ、あんなことよく言えたもんだ。


「ちょっと琴音、落ち着きなって」


 美輝はわたしの手を払って、肩がはだけて乱れていた浴衣を直しながら続けて言った。


「驚いただろうけど、きっと重いとは思ってないよ。でも、結弦の様子がおかしくなったって、どんなふうに?」


 浴衣をきちんと直した美輝は、少し真剣な目をしてわたしに訊ねた。


「うーん、怒ってたとかじゃないんだけど、なんか泣いてたように見えたんだよね。泣くほど重いのかなあ、わたしって」

「だからそうじゃないって。ほら、嬉しかったんじゃない? 琴音にそう言ってもらえてさ」


 そうなのかな? でも、こうして即答してもらえると少し安心する。


「結弦って誰にでも優しいけど、あんまり感情見せるタイプじゃないじゃん。きっと照れてるんだよ」


 美輝の言葉が嬉しい。わたしが落ち込まないように励ましてくれているのが伝わってくる。